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相続税の基礎控除とは?具体的な計算方法を解説
相続税は、遺産総額から基礎控除額を差し引いた金額に課税されます。
基礎控除額は法定相続人の人数によって変動し、2015年の法改正により大幅に引き下げられました。
本記事では、基礎控除額の計算方法や法定相続人の数え方、制度変更による影響について解説します。
相続税における基礎控除の仕組み
相続税の基礎控除は、相続財産にかかる税金を計算する際の非課税枠として設定されている制度です。
相続税額を算出する手順としては、まず預金や不動産などの財産から債務や葬儀費用を差し引いた遺産総額を計算し、その金額から基礎控除分を引いた額に課税されます。
基礎控除を理解する際に重要な「法定相続人」の基礎知識
「法定相続人」とは、民法で定められた、相続する権利を持つひとのことです。
亡くなった方に配偶者がいる場合、配偶者は必ず法定相続人になります。
法定相続人の順位は以下のとおりです。
- 第1順位:子ども
- 第2順位:父母(既に亡くなっている場合は、祖父母)
- 第3順位:兄弟姉妹
このように、相続の権利は血縁関係に基づいて順序が明確に定められています。
相続人の数は基礎控除額の計算に直接影響を与える重要な要素です。
法定相続人をカウントする際の注意点
法定相続人の人数は基礎控除額の算出に大きく影響します。
法定相続人を正しく数えることで、適切な基礎控除額を計算することができます。
そのため、法定相続人の確認には細心の注意を払わなくてはいけません。
ここからは、法定相続人を数える際に注意すべきポイントを解説します。
基礎控除額に影響を与える代襲相続人とは
代襲相続とは、本来相続権を持つはずだった子どもが既に亡くなっている場合に、その子ども(被相続人からみた孫)が相続権を引き継ぐ仕組みです。
代襲相続人となる孫は、基礎控除額を計算する際の法定相続人としてカウントされます。
相続放棄をした相続人も法定相続人としてカウントする
相続放棄とは、被相続人の全財産を受け継がないことを選択する制度です。
放棄の手続きには期限が設けられており、相続開始を知った日から3か月以内に、故人が最後に暮らしていた地域にある家庭裁判所への届け出が必要です。
相続放棄を決めた人も、法定相続人として扱われます。
このため、基礎控除額の計算において、相続放棄をした人も法定相続人数に含まれるので注意が必要です。
結果として、相続放棄があっても基礎控除額は減ることなく維持されます。
基礎控除額の計算では養子の人数に制限がある
養子を法定相続人として数える場合、実子の有無によって制限が設けられています。
実子の有無 | 法定相続人として認められる養子の数 |
実子がいる場合 | 1人まで |
実子がいない場合 | 2人まで |
ただし、特別養子縁組による養子と、配偶者の実子で養子となったひと(連れ子養子)は養子であっても実子として扱われます。
このような養子は実子とみなされるため、上記の人数制限の対象とはなりません。
相続欠格と相続廃除に該当する相続人は法定相続人から除外される
相続人の資格を失う制度には、相続欠格と相続廃除の2種類があります。
対象となった相続人は、基礎控除額の算定における法定相続人数から外れます。
相続欠格とは、法律の規定により自動的に相続権が失われる仕組みです。
遺言書の改ざんや被相続人・相続人への殺人行為などが該当します。
一方、相続廃除は故人が判断して相続権を取り消す制度です。
不貞行為や虐待などの事実があった場合、生前の申し立てか遺言による指定で効力を持ちます。
相続欠格や相続廃除に該当する相続人は、基礎控除額を決める法定相続人の数に含まれません。
相続税の基礎控除額の具体的な算出方法
相続税における基礎控除額は、次の計算式で求めることが可能です。
3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
具体的には、亡くなった方に配偶者と3人の子どもがいる場合、基礎控除額は「3,000万円+(600万円×4人)=5,400万円」です。
よって、遺産総額が5,400万円以下であれば、相続税は発生せず申告義務もありません。
しかし、遺産総額が基礎控除額を超える場合、超えた額に対して相続税が課税されます。
法定相続人の人数と基礎控除額の関係性
基礎控除額は法定相続人が1人増えるごとに600万円ずつ増加します。
相続人の増加により基礎控除額が大きくなるため、養子縁組は相続税を軽減する有効な選択肢です。
ただし、上述のとおり、養子の人数制限には注意しましょう。
2015年の法改正により課税対象が拡大
2015年1月1日の法改正により、相続税の基礎控除額は大幅に引き下げられました。
以下は改正前後の計算式の比較です。
時期 | 基礎控除額の計算式 |
2014年まで | 5,000万円 + (1,000万円 × 法定相続人の数) |
2015年以降 | 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数) |
たとえば、法定相続人が1人の場合、基礎控除額は6,000万円から3,600万円へと減少しました。
この改正により、相続税の課税対象者は2014年の4%台から2015年以降は8%台へと倍増しています。
参考:令和5年分 相続税の申告事績の概要|国税庁(https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2024/sozoku_shinkoku/pdf/sozoku_shinkoku.pdf)
まとめ
相続税の基礎控除制度は、遺産総額から基礎控除額を差し引くことで、相続税の軽減することができる重要な制度です。
基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」という計算式で求められます。
法定相続人には配偶者や子どものほか、代襲相続人や相続放棄をしたひとも含まれますが、養子には人数制限があるので注意が必要です。
相続税の計算方法や対策について詳しく知りたい場合は、税理士などの専門家への相談をおすすめします。