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相次相続控除とは?計算方法もあわせて解説
相次相続控除は、一定期間内に相続が連続して発生し、同一財産に相続税が重複してかかる場合に、二次相続の税負担を軽減する制度です。
この控除を受けるにはいくつかの適用要件がある他、その計算式も非常に複雑です。
本記事では、相次相続控除の要件や計算法、さらに、知っておくべきポイントについて解説していきます。
相次相続とは
相次相続とは、比較的短い期間内に、同一の財産について相続が連続して発生することを指します。
相次相続が発生した場合、同一の財産に対して短期間に2度、相続税が課税されることになり、納税者の負担が重くなってしまうという問題が生じます。
相次相続控除とは
相次相続控除とは、短期間に相続が相次いで発生した場合に、納税者の税負担の重複を緩和するために設けられた制度です。
この制度を適用することで、二次相続の際に納める相続税額から、一次相続で支払った相続税額の一部を控除することができます。
ただし、控除の適用には、いくつかの要件をクリアする必要があります。
相次相続控除の要件
相次相続控除の適用を受けるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 1.二次相続の被相続人の相続人であること
- 2.被相続人が前回の相続または遺贈によって財産を取得し、相続税を支払っていたこと
- 3.前回の相続開始から今回の相続開始までが10年以内であること
これらの要件を満たす場合に限り、相次相続控除を受けることができます。
相次相続控除の計算方法
相次相続控除の金額は、以下の計算式に基づき、二次相続で財産を取得した人ごとに計算されます。
- A: 一次相続で納めた相続税額のうち、二次相続の被相続人が負担した税額
- B: 生命保険金などの非課税財産を除き、一次相続で二次相続の被相続人が取得した財産額
- C: 二次相続で財産を取得した人が受けた、基礎控除額を差し引く前の財産額
- D: 一次相続から二次相続までの期間
(式)控除額 = A × (C ÷ (B - A)) × ((10 - D) ÷ 10)
上記で求められた控除額は、二次相続で計算された相続税額から差し引かれます。
相次相続控除を利用する場合のポイント
相次相続控除は、短期間に相続が重なった際に利用できる制度ですが、その制度の特性や適用について、いくつかのポイントがあります。
以下で確認していきましょう。
ポイント①前回の相続時に相続税が発生していないと使えない
相次相続控除の要件として、二次相続の被相続人が、一次相続の際に実際に相続税を納付していたことが必要です。
たとえば、一次相続で子が受け取った財産総額が相続税の基礎控除額内に収まり、納税額が0円になっていた場合、二次相続で相続税の支払いが発生したとしても、控除は適用されません。控除の目的が、税の重複負担の緩和であるため、そもそも税金を負担していない場合は対象外となります。
また、二次相続時の財産に一次相続と同一の財産が含まれてたとしても、1回目の相続で相続税を支払っていないのであれば適用されない点には注意してください。
ポイント②被相続人が同時に死亡した場合は使えない
相次相続における控除は、同一の財産について相続が連続して発生した場合に適用できます。
そのため、夫婦が交通事故などで同時に死亡した場合や、どちらの死亡が先かわからない場合は、この相次相続控除の制度は適用できません。
ポイント③財産が未分割でも使える
相次相続控除は、二次相続の申告期限までに遺産分割が完了していなくても適用できます。
遺産分割が完了していない場合は、法定相続分に従って財産を取得したものとして、仮に控除額を計算し、申告書を提出することができます。
その後、遺産分割が完了し、控除額が変わった場合は、遺産分割が確定した日の翌日から4ヶ月以内に「更正の請求」を行うことで、修正することが可能です。
ポイント④相続税の申告後でも適用できる
相次相続控除は、二次相続の申告を済ませた後に、適用漏れに気づいた場合でも、原則として法定申告期限から5年以内であれば適用を受けられる可能性があります。
これは、払いすぎた税金の還付を求める「更正の請求」という手続きを行うことで対応できます。
申告時に見落とされがちな控除のひとつであるため、過去の相続で短期間に相続が重なっていた場合は、適用可能かの確認をすることが推奨されます。
まとめ
相次相続控除は、一次相続から10年以内に二次相続が発生した場合に、二次相続の税負担を軽減するための制度です。
控除を受けるためには、二次相続の被相続人が一次相続で相続税を納めていたことなどが必須条件となります。
計算式が複雑であること、そして財産が未分割でも適用できる点、さらには申告後に適用漏れが判明しても遡って請求できる可能性がある点も重要です。
お困りのことがありましたら、税理士までご相談ください。