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生前贈与とは?始めるタイミングはいつ?
生前贈与の開始時期は、節税効果を大きく左右する重要な要素です。
令和6年1月からは暦年課税の加算期間が7年に延長されたため、贈与開始のタイミングがより重要になりました。
本記事では、生前贈与の基礎知識から最適な生前贈与のタイミングについて解説します。
生前贈与の基礎知識
生前贈与は、自分自身が亡くなる前に、資産を親族などへ受け渡す方法です。
多くの方は資産の譲渡といえば相続を思い浮かべるかもしれません。
相続は亡くなった後に財産を引き継ぐ制度ですが、生前贈与では存命中に計画的な資産移転が可能です。
生前贈与の場合も相続時と同じように、大きな金額の資産を譲渡する際は贈与税が生じます。
ただし、贈与税の負担を抑えられる優遇制度が複数用意されているため、適切な制度を利用すれば、子供や孫へ非課税で資産を移転するための選択肢を広げることが可能です。
生前贈与には主に2種類の方法がある
生前贈与は、主に「暦年課税制度」と「相続時精算課税制度」の2種類に分けることができます。
以下で、それぞれについて詳しく解説します。
暦年課税制度の仕組み
暦年課税は、贈与が行われた年ごとに贈与税を支払う制度です。
毎年110万円までは贈与税が免除される特徴があり、長期的な視点で資産移転を計画できます。
相続時精算課税制度と比べて1回あたりの非課税枠は小さめですが、時間をかけて継続的に贈与することで、結果的に大きな資産を税負担なく移転することが可能になります。
相続時精算課税制度の仕組み
相続時精算課税制度では、生前贈与で生じた贈与税を贈与者の死亡時まで保留し、相続税と合算して支払う仕組みです。
2,500万円までの特別控除枠が設定されており、この範囲内なら贈与税が免除されます。
この制度を利用できるのは、贈与する側が60歳以上で、受け取る側が18歳以上の子供または孫に限られます。
一度に大きな資産を移転したい場合に適した制度です。
ただし、相続時精算課税制度を選んだ場合は、暦年課税への切り替えができないため、利用する際は、慎重に判断する必要があります。
生前贈与に関する改正について
上述した暦年贈与と相続時精算課税制度を含む生前贈与制度について、税制改正が行われ、変更がありました。
その内容について解説します。
生前贈与加算の期間が延長された
生前贈与加算とは、相続が発生する前の一定期間内の贈与財産を相続財産に含める制度です。
令和6年1月1日以降の贈与については、加算対象期間が従来の3年から7年へと拡大されました。
ただし、相続開始前の4年目から7年目までの期間に贈与された財産については、合計額から100万円を差し引くことができる緩和措置が導入されています。
相続時精算課税制度に新たな控除が導入された
相続時精算課税制度は、令和5年までは金額の大小に関わらず毎年の贈与税申告が必要でしたが、令和6年1月1日からは、年間110万円までの贈与について申告が不要となりました。
さらに、相続開始前7年以内の贈与であっても、110万円以下の贈与は相続財産への加算対象から除外されます。
この改正により、相続時精算課税制度を活用した相続税対策の幅が広がりました。
生前贈与を開始する効果的なタイミングとは?
上述した税制改正にあわせて、今後、どのタイミングで生前贈与を開始すると節税対策をより効果的に行えるのかを検討する必要があります。
暦年贈与はなるべく早めに開始する
暦年課税による贈与は、相続開始時点から7年前までの贈与が加算対象となりました。
相続開始日から起算するため、できるだけ早い段階から贈与を始めることが有効です。
将来の相続時期を正確に予測することはできませんが、早期に贈与を開始することで、加算対象期間から外れる可能性が高まるでしょう。
資産価値の上昇が見込める財産から贈与を検討する
将来的な値上がりが期待できる財産から贈与することが、税負担軽減に効果的です。
7年以内に相続が発生した場合でも、相続財産への加算額は贈与時点の評価額が基準となります。
たとえば、都市部の不動産や成長が見込める事業用資産など、将来の価値上昇が予想される財産から贈与することで、値上がり分を相続財産から除外できる可能性が高まります。
その他の非課税制度の活用について
贈与税の非課税制度を適切に利用することで、税負担を抑えた効率的な資産移転が実現できます。
非課税贈与の特例
住宅取得資金や教育資金の贈与には、通常の贈与枠とは別に大きな非課税枠が設定されています。
主な制度は以下の通りです。
贈与の種類 | 非課税枠 | 特徴 |
住宅取得資金 | 500万円~1,000万円 | 住宅の種類により上限額が異なる |
教育資金 | 1,500万円 | 教育目的の支出に限定 |
これらの制度には適用期限があり、細かな要件も定められています。
ただし、子供の住宅購入や孫の教育費用など、具体的な資金需要がある場合には、非常に効果的な選択肢です。
要件を確認したうえで、計画的な活用を検討することをおすすめします。
孫や嫁・婿など相続対象ではない人物への贈与
通常の相続時には財産を取得しない孫や嫁・婿などへの贈与は、生前贈与加算の対象外です。
そのため、贈与者の年齢が高く、相続発生が近いと予想される場合は、これらの家族への贈与を検討すると相続税対策として効果的です。
まとめ
生前贈与は、開始時期と贈与対象の選択が重要な鍵になります。
令和6年からの制度改正で暦年課税の加算期間は7年に延長されたため、できるだけ早期に贈与を始めることが効果的です。
また、不動産など将来の値上がりが期待できる財産を贈与したり、相続対象外となる孫・嫁婿への贈与も税負担軽減につながります。
最適な贈与計画を立てたい場合は、税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。